思い出すだけで、心臓がばくばくする。


確かに、凄い部類だ…アレは。


恋愛未経験者であるオトメにするようなものではなかった。


今、冷静になって思えば。


…駄目だ、冷静になんてなれない。


「いやその…。だけど、ほら…玲くんみたいに艶気がないというか…ええと…繊細じゃないというか…。ああ…いや…玲くんが下手だといっているわけじゃ…むしろあれはあれでエロ…ち、違う!!! 言いたいのはこんなんじゃなく…んんと、玲くんとの方が凄い…ぎゃあああ、あたし何言ってるんだろッッッ!!!」


あたしの頭は、沸騰しすぎてパニックで。


本人に何を…本人じゃないからいいのか!!?

いいや、そんな問題じゃない!!!


玲くんは、考え込み…言った。


「"僕"とはいえ…僕の意識ないままそんなことをするのは腹立たしいけれど…肉体に戻れれば…その感触を覚えているのかな。"エロ"か…」


ぶつぶつ、ぶつぶつ。


「仮初にでも繋がった事実があるのなら…心は、繋がるんだろうか」


ぶつぶつ、ぶつぶつ。


「やっぱり…僕の意識でやり直さないと意味ないよな」


玲くん。


何の――?



「玲ッッ!!! だからとっとと戻れッッッ!!!」


煌の怒声が飛び、見れば櫂からもなにやら怒りの視線が向けられている。


いまだ"エディター"は声を上げ続け、櫂は闇を吸収している。


場は、緊迫していたんだ。


「ごめんなさい、ごめんなさいッッッ!!!」


あたしは慌てて2人に謝った。


謝れば、きっとこの話はご破算になると思ったのもあるのだけれど。



「直ぐ、戻るッッッ!!!」


玲くんは、肉体までダッシュした。


「なあ…神崎…」


由香ちゃんがぽかんとした顔であたしに言った。


「師匠…元気になって何よりだけどさ…。師匠って…見てて飽きないよね。複雑そうで単純で…何だかボク…、Sの血が目覚めそうだよ」


あたしは――空笑いをした。