「師匠…未遂だったんだろ?」


「……。こっちは、完遂…さ」


どこまでも弱弱しく。


「芹霞が来ると分かっていれば…死守すればよかった…」


そんな呟きが聞こえた。


「死守?…何が?」


きょとんとして聞いてみれば、


「……唇」


玲くんは、悲しそうに笑った。


体全体から、酷い"後悔"の空気が漂っている。


「我慢したのに…結局、また中途半端…」


唇をごしごし擦ったまま、俯いてしまった。


あたしは、何とか励ましたいと思って必要以上に陽気な声を出す。


「でも、ほら…それは櫂を助ける為だし…」


「……」


「不可抗力っていう言葉もあるし…」


「……」


「ねえ、玲くん元気出してよ~」


駄目だ玲くん、項垂れて落ち込んでいる。


あたしは困って由香ちゃんに顔を向けると、由香ちゃんは突如ポンと手を叩き、


「師匠、師匠!!! 師匠の肉体は…神崎との凄い"ちゅう"をやらかしたから、きっと中和されているって」


何を――言い出す、由香ちゃん。


しかもスルーすればいいものの、玲くんは食らいついたようで、顔を上げてあたしを見る。


「凄いの、したの?」


聞き方がストレート過ぎて…あたしの顔がぼんっと音をたてて赤くなる。