焦ったあたしは、しどろもどろに言い訳に徹する。
「れ、玲くん…あのね、衝動的というかね、ほらつい…」
「そういうの…心で思っているから出るんだよね」
ぼそっ。
「いや、玲くんは優しいほっこり玲くんだし…」
「……」
「あ、あたし…口が悪いから、つい…」
「……」
「玲くん、ごめんなさ…」
途中で言葉を切ったのは。
ゆっくりと、顔を上げた玲くんが――
「ありがとう」
微笑んでいたから。
そして言ったんだ。
「ありがとう、"僕"を罵倒してくれて。ありがとう…僕を、煌みたいに叱ってくれて。喧嘩腰の相手をしてくれて」
何で御礼を言われるのか分からない。
「今度…僕の時も、怒ってくれる?」
何で、そんなに綺麗な微笑みなんだ、玲くんは。
「れ、玲くん…Mに目覚めた…とか?」
恐る恐る聞いてみると…
「ん? 僕は元々Mだよ?」
可愛く首を傾げられた。
まずい、また鼻血が…
「いちゃつくな、玲ッッッ!!!
狂気を消している間に、
とっとと、自分の体に入りやがれッッッ!!!」
煌の声が飛んで来た。
すると玲くんは、微苦笑して。
「まあ…煌の言うことを聞いてやるか。
だけど…後で鼻血の理由聞かないとな」
声が小さすぎて、玲くんが何を独りごちていたのか判らないけれど。
そして、ふと動きを止めた。
「穢れた意識は…肉体が受け付けてくれるのかな…」
それは翳りの出来た顔で。
玲くんは…手の甲でごしごしと唇を拭った。

