"黄色い外套男"


"突然女がばたばたと倒れてる非常事態"


それは芹霞と煌がいる渋谷で起こっているらしくて。


どくん。


先刻までの嫌な予感は、はっきりとした形になって俺の心臓を動かした。


どくん。


俺は桜の携帯の着歴一覧より、たった今切られたばかりの番号に折り返して電話してみるが、繋がらなかった。


それが一層、不安を煽る。


「急いで、渋谷へ!!!

もっと早く!!!」


慌てたような桜の声。


倒れている女…

その中に芹霞は居ないよな!!?


芹霞の携帯は…繋がらない。


喉が異常に渇く。

震える片手を、もう片方の手で押さえつける。


――芹霞ちゃあああん。


8年前の、唾棄すべき俺が泣き喚く。



脳裏に横切るのは――

視界に拡がる真紅色。



芹霞。


芹霞。



無事でいてくれ。


頼むからッッ!!