「ええ、玲さんが私を愛して満足させてくれたのなら。その時は、きちんと貴方の大事な従弟を助けて上げる。約束するわ」


生々しい赤い唇が、誘惑の言葉を放った。


そこから吐き出される言葉が、何処までの真実性を持つものかは判らないけれど…だけど信じる以外に術はなく。



――あははははは~


最短で櫂を助ける為には、僕にはもうこの手段しか残されていなかった。


僕が戻れないと知った櫂達は、きっと残りの貴重な時間を僕の救済に費やす気がしたんだ。


そういう…奴らだから。


――それでは駄目だ。


僕が足を引っ張ってはいけないんだ。


だけど僕が此の世界から抜け出れないのなら。


此処には僕の優位性が何一つないというのなら。


僕に残された武器は、この身1つ。


僕だってまだ戦える。


過去を思えば決して綺麗とはいえない体だけれど、こんなもので櫂を助けられるのなら。


僕は何処まででも堕ちてやろう。


その思いに偽りはない。


――ねえ、玲くん。


芹霞――。


もう君に会うことが叶わぬのなら。

もう君に愛される希望が何もないのなら。


堕落しきった僕の中での、唯一の"真実"を君にあげる。


僕の愛は――

君にだけに捧げる。


神崎芹霞、君だけに。