しかし桜は、手の中の携帯を見つめたまま、出ようとしない。
「どうした? 俺の前だからと遠慮しなくていいんだぞ?」
「は、はい…。ただ…見知らぬ番号からかかってきたもので…」
間違い電話だろうか。
「080ですから、携帯からですね。
…切りました。間違い装った敵からということも考えられますので」
警護団長は警戒心が強い。
いや、そうすべき過去が、俺の知らぬ処でも多々あったのだろう。
しかし――。
また携帯が鳴る。
それを桜が切る。
再び携帯が鳴る。
また桜がそれを切る。
そして――
「桜。鳴り止まないようだから、一度出たらどうだ?」
俺の苦笑に、桜は溜息をついて頷いた。
「もしも『鳴ってるの判ってるなら、さっさと出』
ブチッ。
また桜が携帯を切った。
「やはり。見知らぬ男からの間違い電話だったようです」
そしてまた携帯が鳴る。
「しつこいので、電源落としますね…」
電源ボタンを押そうとする桜に、俺は手を延べた。
「桜、ちょっとその電話貸せ」
凄く気になったんだ。
そう――。
怒鳴り声の裏側で、同時に聞こえた喧しい多くの音が、
まるで――
悲鳴のような危殆を孕んだもので構成されていた気がしたから。

