「ねえ…此処、寒くない?」


先刻から寒気がするんだ。


刑場の話題になったからだろう、何だかざわざわと嫌なものが空気に漂っている気がして。


黙っていれば、何かの笑い声が聞こえてくる気がして、あたしは…玲くんを両腕に抱えたままの櫂の服と、反対側の手で由香ちゃんの手を握った。


「何だ、芹霞。怖くなったのか?」


櫂の揶揄が飛んでくる。


「こ、こここ怖くなんか…」



そして――

それは突然で。



「…おかしい」



櫂が、酷く警戒した声調に切り換えたのは。


このタイミングでそれはありえない。


怯懦の心(チキンハート)を益々煽られる。


「し、紫堂。お、おかしいって何がだよ? 紫堂が言うと、洒落にならないんだよ…」


櫂は足を止め、後ろを振り向いた。


「やはり…。

何より桜が来るのが遅すぎるのと…

此処に氷皇の色がない」


「色?」


「ああ、とにかく己の色で染めたがるあの男が用意したものに、それがない。意味ありげな地蔵なんか出すくらいなら、まずあの男なら…青く染め上げた地蔵でも出しているだろう」


確かにそうだ。


それくらい、嘘臭い笑い声でやらかしそうだ。

あたしの家の壁を青くしたくらいなんだから!!!


許すまじ!!!


怒りが沸々と湧いてきてしまった。