「刑場合わせたら、どれ程の人間が殺されたんだろうね。何万単位ではないことは確かだ。ホント桁違いの凄い心霊スポットだよ、東京…という土地……。………」


言葉尻を途絶えさせ、由香ちゃんは慌てて背負った銀のリュックからノートを取り出し、パラパラと捲った。


玲くんの伝言を書き綴っただけのものかと思いきや、それ以前から色々書き込んでいたようだ。


「紫堂…ばっちり符合するよ!!!」


ついには、更に深く考え込んでいる櫂の名が呼ばれた。

櫂の目には、好戦的な光が灯っていた。


多分、同じコトを思っていたのだろう。


それが何かは、さっぱり判らない。


あたし、櫂の幼馴染なのに。


「地蔵は…瘴気を抑える役目をしていたんだろうな。それが多分…故意的に壊された、か。

芹霞、お前より以前に、その小伝馬町の地蔵の首はとれていたはずだ。東京を鎮護するモノが、蹴り飛ばされたぐらいで壊れはしないだろう。恐らく、何らかの呪力が必要なはずだ」


「え? え?」


「七不思議の首なし地蔵の舞台が皆…元処刑場なんだ。東京で一番怨念渦巻く場所。芝高輪、小菅、浅草、板橋、小伝馬町、品川…南千住。

……。結界、か。地蔵は。そして東京の結界が…破られたと、そう言うことか」


そして櫂は薄く笑う。


「まるで…山手線が破壊された2ヶ月前を彷彿させる」


すると由香ちゃんの眉毛が八の字になった。


2ヶ月前、あたし達の敵側の人間であった彼女は、それを酷く後悔している。だから名誉挽回とばかりに、いつも頑張っている。

それが判っているからこそ――


「由香ちゃんとあたし達との、出会いの時だね。あれがなければ、あたし達…友達にはなれてなかったね」


そう笑ったら、


「ありがとう…」


由香ちゃんは、何かを酷く押し殺したような顔つきで、笑っていた。