「翠くん!!? 本家から出た君が…また戻るというんですか!!? 戻ったら最後、もう外界に出れないかも知れませんよ!!!?」


「……。だけどよ、朱貴。今やらなきゃいけないって気がするんだ。

俺…皇城だけが一番偉いと教え込まれ、外の世界を甘く見過ぎていて…物事を簡単に考えすぎていて、我武者羅に必死で何かをするということを…していなかった気がするんだ。

何だかさ、紫堂櫂が羨ましくてさ。紫堂の次期当主の肩書き奪われても、それでもここまで"主"として、"仲間"として慕われるのって凄いと思う。

それだけの奴ってことだろう? だからかな、俺も何かしてやりたくなるんだ。…朱貴だって、何だかんだと手を貸すのは、結局そういうことだろ?」


「……」


「周涅が…皇城の者が、紫堂櫂に手を出したということは、皇城も今回のことに無関係ではないと言うこと。だったらさ、皇城の者として、それは見逃すことは出来ない気がするんだ。相手がどんな奴でもさ」


「……」


「お前は、紫茉が回復するまで傍についていてくれよ。ついてこいとは言わないからさ」


「言わないのか…!!?」


「情けないこと言うなよ、馬鹿ワンコ!!! 皇城の次男の…巷の権威はまだまだあるんだぞ!!? とりわけ神奈川では!!!」


そして私を見た。


「葉山。上手く行ったら…聞いて貰いたいことがあるんだ」


それは酷く真剣で。


最初に会った時よりも…ずっとずっと男らしい顔つきになったと思う。


彼も彼なりの速度で…成長しているのだろう。


「俺、頑張って男見せるから!!!

だから、信じて欲しい」


私は――

頷いた。


いつも口ばかりで情けない結果を晒してきた奴だけれど、今の言葉だけは信じられると思った。


少なくとも。


計都という男よりは、遙かに信じられる。


私の本能が、そう言っている。