「あ…桜……」


壁に張り付くようにして立ち竦んでいた煌と翠は、イボガエルを巡る美少女達の修羅場に、大きく顔を引き攣らせていて。


「朱貴が…いなくてさ…」


逃がしたのか、この男!!!

大それたことを言い出して、何で逃がすんだ!!!


「それより…ちょいあれ見ろよ」


指を差したのは、机に置かれている…星冠(ティアラ)。


硝子製できらきら輝いている。


そこから下に垂れているリボン。


私は…言葉を飲み込んだ。



『第56回 桜華ミスコンテスト


優勝者 紫堂玲』



玲様……。


お見事です。

おめでとうございます。


私は心の中で、頭を下げた。



「優勝者は、ずっと学園長の愛人になるっていうの、了承してたのに!!!」

「了承したのは私よ!!?」


ああ、醜きは女の嫉妬。


甲高い声を上げて取っ組み合いが始まった。



「まあ…ミスコンで優勝したら、芸能界からもお呼びがかかるらしい、有名なミスコンらしいし…」


翠が呟いて。


「た、助けて……」


薄い髪の毛を女達に毟り取られそうな学園長は助けを求めてきたが、それを冷やかに見下して私達は後にする。


女生徒を食い散らかして、その処理を金で解決してきたのなら、生ぬるすぎる制裁だ。



「なあ…優勝者があのイボガエルの愛人となるなら、玲…は…」


「考えるな、馬鹿蜜柑。あの男の邪念に、玲様が流されるはずがないだろう。あんな男、玲様に感電させられて再起不能がいい処だ」


私は言った。


生徒の投票で決まるはずのミスコン。


それを学園長が、女生徒から捧げられる若い肉体を餌にして、裏から操作していたのだろう。


きっとあの男にとって玲様は。


前日に会ったきりなれど…どうしても手に入れたかった美少女に違いない。


あの美しさは…確かに異常すぎだ。


玲様が手に入るならば、きっと玲様の性別など関係ないに違いない。