桜Side
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私は慌てて学園長室に飛び込んだ。


「煌!!! 直ぐに此処を発つぞ!!!?」


そう叫びながら入った部屋は、一面眩しい金色で…


中では…修羅場だった。



「ミスコンで、どうして私が勝者じゃないの!!?」

「酷い、私…初めてを捧げたのに!!!」

「あの女…桜華生じゃないじゃない!!!」


女が、イボガエルの学園長を取り囲み、思い思いに詰り倒していた。


しかし私が気になったのは、そんな光景よりも――この部屋の様子で。


理事長室にはあれだけの物理的被害があったのに、隣室のこの部屋には、不可思議なくらい損害がない。


反対ならまだ分かる。


しかし――

何故、氷皇の領域は損害があって、世俗に塗れた此処は無事だ?


まるでそれは仕向けられたかのよう。


絶対不可侵の領域だけが損傷を受けている事実。


そこから導かれるものは――

理事長室を崩そうとしているのは、主ではないかということ。


緋狭さんも神崎家を燃やした。


ならば――氷皇もその領域を消そうとしているのではないだろうか。


そしてその氷皇からの依頼を受けた計都という謎めいた男が、意味あり気な言葉残して部屋から消えられたのも納得がいく。


必要がなくなった。


そういうことか。


私達に桜華の舞台は必要なく、次ステージに進めということなのか。


――あははははは~


いつも嘘臭い笑い響かせて直接乗り込んでくる彼にしては、お節介すぎる程の押し出しのようにも思えるけれど、所詮私達は…氷皇の手の内にあるのか。