「あるなら教えてくれ!!! この状態でのベストは、七瀬以外の力を頼るしかない。彼女を危険に晒したくないだろう、お前だって。だから教えてくれ!!!」


「だけど…」


小猿は何か方法を知っている。


こんなに櫂が言っているのに、酷く…躊躇っている。


「何だよ、早く言えよ!!!」


短気な俺は、こうした優柔不断な態度が癇に障る。



ひくっと怯えたような表情見せた小猿は、やがて諦めたように言った。



「――周涅(スグリ)。


紫茉の兄貴なら、出来るはずだ」



周涅…って、氷皇と酷似しているっていう…皇城の重鎮か?



「連絡は…とれるか!!?」


小猿は、困ったような顔をしてやけに大きな溜息をつき…頭をぼりぼりと掻いた。


「とれるのは…紫茉だけだ。俺、あいつ嫌いだから…連絡先なんて知りたくもなかったし」


消沈した藍鉄色の瞳が、漆黒色の瞳に絡みつく。


櫂の目が、苛立ったようにすっと細められた。


結局…七瀬の回復を待つしかないという事実。


打開策はないのだろうか。



「玲くん…」


芹霞が、ソファーに横たえた玲の手を握りしめている。


「玲くん…がんばって…」



少しだけ…


苦しそうな玲の表情が和らいだような気がしたけれど。


心がないというのなら、俺の目の錯覚だったのかも知れねえ。


抜け殻に、声は…届かないだろう。


"思う"意識がないのであれば。