「は?」


間抜けな声を出したのは、俺。


「七瀬しか出来ないから、回復するのを待てって、たった今…」


「"あの領域にすぐ行き着けるのは、紫茉だけだ"。

そう言っただろう、朱貴は。

口にしたのは早さのことで、限定的な言葉じゃなかった」


途端に、櫂の目が希望に光る。


そうだよな。

どんなに玲を助けたくても…あんな弱まった七瀬見ながら、また危険な目に遭わせたくないと思うのが人情。


そして遠坂なりに…自らの失態をカバーしようと、懸命に役に立とうとしているのが感じ取れた。


師匠たる玲の危機に、奮起しているのは…実は遠坂なのかもしれない。


緋狭姉の攻撃の中、朱貴の結界の中で、必死に玲と七瀬の上に覆い被さるようにして身体を守っていたけれど。

朱貴のサポート受けて、どうにか緋狭姉の猛攻撃の中、玲の元に駆け付けられた俺は、朱貴の結界に更に結界を施した。


二重結界を施していたはずなのに…突如大地が垂直になったり、雨が降ったり風が吹いたり。結界などものともせず、貫通してくるその力。


俺だけならまだしも、朱貴の結界ものともしない力って何よ?



保健室の物理的損害が大きくて、崩れた瓦礫の一部が玲の身体にぶつかったり、それでも遠坂と俺は必死に玲と七瀬を守っていたんだけれど。


立て続けに襲う、不可解で脅威の自然現象に、足場さえも覚束ない状態の上…更に蝶まで現われ、使い魔たる"あの女"の目を抉って、命を奪った。


そして七瀬が目覚めて言ったんだ。


――玲が…閉じ込められた!!!



「他に…方法があるのか!!?」


櫂の鋭い目に、小猿は表情を崩した。


この様子…


知っているんだ、こいつ…。