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「ああ…ああああ…痛い、痛い、痛い…」


理事長室に入った時、熱にうなされた七瀬が悲鳴を上げて泣き出した。


朱貴の肩で、ガタガタと震える七瀬の身体。


いつも男言葉を使いながら、凛として毅然と佇む女だから、そう叫ぶのは異常過ぎる光景で。


芹霞が心配して七瀬の元に駆け付け、その手に触れようとすると、ますます七瀬は痛いと叫んだ。


「熱が…高すぎるんだ」


櫂が目を細めて言った。



「あああ…お父さん……お母さん…」


熱で…よっぽど心が弱っているのだろうか。


記憶喪失だと聞いたが…その記憶にうなされているのだろうか。


「やめろやめろやめろ!!!」


それはまるで、電話で聞いた玲の声のような悲痛さで。


だけど、"狂い"ではない。


身体の悲鳴なだけだ。


「こいつはいつもこうしてぶっ倒れる。特に夢で危険な目にあうとほぼ必ず。心配するな」


朱貴が薄く笑って、両手で七瀬を抱き上げた。


「治療できるのは…俺だけだ」


まるでそれを誇りに思っているかのように、嬉しそうな表情を見せた朱貴。


少しだけ…甘さが滲んだと思ったのは、気のせいだろうか。


いつもの七瀬への虐待思えば、何でそんな表情になるのか謎だ。


ドS妄想でも暴走しているのだろうか。