馬鹿な俺には、どう逆立ちしたって"心"と"身体"の因果関係の謎を解き明かすことは出来ねえけれど、玲の……いつもみたいにあんな"えげつねえ"屍の誕生されたら、たまったもんじゃねえよ。


こいつは…危険を予感しながら自らその中に乗り込んだ。


"虎穴に入らずんば虎子を得ず"


その諺の意味くらい、俺だって知っている。


玲は、直接乗り込んだんだ。


――煌、頼むぞ。


七瀬が導引者で傍に居て、強い朱貴が抜け殻の肉体の守護者となっていて。


それで危機に陥るなんて、俺は未だ信じられねえことで。


だけど思うのは、玲達が夢に潜った直後から、待ちかねていたように外部からの来襲が一斉に始まったのは…偶然ではないということ。


膨らんだ瘴気。


"生ける屍"


小猿の言う《妖魔》


制裁者(アリス)


桜が言うには、紫堂の警護団までいて。


その上――


現われたBR…001。


現われた緋狭姉。


そして黄色い蝶。


黄色い外套男は居なかったけれど。



此処まで揃えば、もう全てが示し合わせていたとしか思えねえ必然性を感じたけれど、緋狭姉は、黄色い蝶を見て…冷やかだった顔つきを、警戒に満ちたように厳しくしたんだ。


必然の中にあった、偶然…とでもいうのだろうか。


それは緋狭姉が想定していない事象で。


何か…意味があるのだろうか。


何故突然黄色い蝶まで出現したのかは判らねえ。


まあ…以前桜華で出現したから、この校舎が呼び寄せやすいのかも知れないけれど…何だかそれも釈然とはしねえ。


そして前回、芹霞や…生徒を襲った黄色い蝶は、今回…俺達を緋狭姉の攻撃から守ったことになる。


何の因果か知らないけれど――

人生、何が幸いするか判らねえよ。



でも思う。


緋狭姉はまたやってくる。


早い時期に。


きっと今はただ――

体勢を立て直すためだけに、退いたに過ぎない。