「駄目だ、玲!!! あたしが…あたしが!!!」



「もういいなら…返還するわよ?」



そして紫茉ちゃんは――


「玲、駄目だ、あたしと共に…」


叫びながら掻き消えた。



残るのは、"エディター"と僕。


2人だけ――。


「ふふふふ。これで玲さんは私のもの。私だけの"王子様"。さあ…"安心"させてね、王子様。永遠に離れないと…永遠に私を愛すると…私に誓ってね?そして来るべき刻、楽園に行きましょう。

そうしたら…特別に、貴方の"元"ご主人様を、助けてあげるかもしれないわよ?」


それは悪魔の誘惑。


僕を、狂気に縛り付ける罠。


それでも。


もしも、此処から櫂を助けることが出来るのなら。

身体は櫂の元に戻れなくても、此処から櫂の力になれるのなら。


――約束、して欲しいんだ。


僕は、その望みに賭けたかった。

例えそれが"エディター"の気まぐれで、

罠だったとしても。


だけど僕は、"もしも"の可能性に縋りたいんだ。


――約束、して欲しいんだ。


…櫂。


僕は、確実性がないお前の案は、呑みたくないんだ。


お前を危険に遭わせたくないんだ。


どんな手段をとろうとも、お前を守りたい。


その為に、僕がいる。


お前が僕を守り続けてくれた分、僕はお前を守りたいんだ。