『え? だって初対面の時から、わざわざ主張してくれたじゃないか。芹霞しか恋人として認めないって。凄く愛している女だって。芹霞しか心にいれないって。芹霞だけしか愛さないって』


紫茉ちゃんの物言いは、ストレートすぎて。


確かにそうだったんだけれど。

図星なんだけれど。


何だか…

そう振る舞った僕の行動が恥ずかしくなってくる。


思えば由香ちゃんだって判っているし。


そんなに…判りやすいのか、僕。


――芹霞以外には。


『…知られちゃまずかった…か、もしかして。ああ…知らない振りしてればよかったな、ごめんな…忘れてくれ?』


「いや…別に…いいよ。うん…。もう隠す必要ないし…皆知ってるし」


芹霞にも、隠していないんだけれど。

だけど上手く伝わらないだけで。


何だか笑いが虚しくなってきた。


『なあ…あたしな、玲のことは好意持っているが、他の奴らも好きなんだ。だからその、玲のことだけを応援してはやれないけれど…だけど、本当に芹霞と幸せにはなって貰いたいんだ。芹霞も玲も友達だから、さ』


凄く、心根が真っ直ぐとしたいい娘なんだろう。

ある意味、それは芹霞と同種で。


だからなのか、芹霞が彼女を気に入るのは。


「ふふふ、気にかけてくれてありがとう。だけどこれは…僕の闘いだからね、自分で何とかするよ。君の気持ちだけ受け取るよ?」


『そう言ってもらえると助かる。ああ…話しすぎたな。じゃあ、行くぞ?』


「OK」



同時に――僕の立つ地面が抜けた。


沢山の映像が、落下する僕を取り巻く。


夥(おびただ)しい数の画面(モニタ)で埋め尽くされた、巨大な塔の中に落ちている気分だ。


映像を捉える限りでは、僕の記憶にもあるもので。


同時に、さっきまでは早送り状態だった声が、はっきり聞こえてくる。



僕の…馴染みある深い声が響き渡る。



――この中に映っているのは…お前がよく見知った顔だろう?一縷?


――一縷を殺したのは、上岐妙だな?



これは…使い魔である"彼女"の記憶か。



僕は…沈む。