「敵はあっちだ!!! どうしてこちらまで被害に遭う!!!?」


言いたくなくても、言わざるを得ないこの状況。


私達は、ぶら下がっている糸により、かろうじて飛ばされないけれど。


激しい揺れに、どこまで糸が持つか判らない。


猛烈な勢いを誇る雨と風に、目すらまともに開けていられない。


自分を保つだけで精一杯。


「止めろ、早くこの風と雨を止めろ!!!」


瓦礫が流れ行く先は…保健室のある場所。


間違いなく、保健室も被害対象になっている。


私達が、何で櫂様達を攻撃しないといけないんだ!!?


「あ、ああ。ええと…止まれ…あれ? ………駄目だ。止まらない。風ぐらいはいつも制御できるんだけれど…あれ?」


風しか制御できないのに、どうして他の力を使ったんだ、この猿は!!!


「集中しろ!!! 自分が仕出かしたことだろうが!!!」


「してる…んだけど、駄目だ。暴走して…」


風雨の勢いは収まらない。


大型の台風の最中にいる感覚だ。


力など使えぬ私は、ただ叫ぶばかりで。


「じゃあ、誰が止めるんだ、これを!!!!?」


そう私が怒鳴った時。





「きゃああああああああ!!!」



芹霞さんの悲鳴が聞こえた。



絶対、この風による被害を受けたのだと思った私は、更に力一杯怒鳴った。


「芹霞さんに何かあったら、殺してやるからなッッッ!!!」


「そ、そんな……!!!」


私の威嚇に、揺らいだらしい翠によって、更に暴風雨までも激しく揺れた。


ああ、糸が…雨風に引き千切られそうだ。


強化しようにも、結界を張ろうにも、手元が風に煽られてうまく狙いが定まらない。


銀の男の気も、周りの気も…掴み取れる環境ではない。


集中できずに居るのは確かなことだが、仮にもそれを引き起こした術者ならばそんなことは言ってられないはず。







その時――。


ぴたり、と風雨が止んだ。



あまりに突然過ぎる出来事に、半ば呆然と辺りを見れば。



「大丈夫か、桜?」



緑色を纏う、櫂様と目があった。