「櫂、何? 紫茉ちゃんが何?」


芹霞は判らなかったらしい。


「ああ、七瀬が…朱貴の弱点だということさ」


「???」


あの男も苦労しているというわけか。


七瀬の行く先々に現われて、拉致同然に連れ帰る。


判りにくい反面、極端すぎて判りやすい行動。


加えて――。


時折彼女に向ける…その視線に混ざるやるせなさ。


芹霞と友情を深め合う姿でさえ、苛立った目を寄越していて。


俺だって…似たようなものか。


何処まで隠せているのか判らない。


今なら、もう…隠す必要もないわけで。それでも全て伝わらない、俺の想い。


忍ぶ辛さと…

自分の不器用さと…

…相手の超鈍感さ。


なあ、朱貴…。

どんなに高飛車ですました顔で、意味ありげな立場をひけらかそうとも。


親近感くらい…湧いてもいいだろう?


「芹霞。俺から離れるなよ」


朱貴の領域が遠ざかるにつれ、次第に強まる瘴気。


俺の右手は芹霞と繋ぎ、左手は緑の光。


本当は…芹霞を連れ歩きたくはないけれど。


玲の頼み事だ。


あいつは…芹霞を俺の保険にしているんだろう。


芹霞が居る限り、俺は無茶をして…"決行"しないと。


聡い奴だ。


「……」


ふと…繋いだ手が気になった。


「……何?」


俺は…繋いだままの芹霞の手を引き寄せ、

その手の甲に唇を寄せた。


「ちょちょちょ!!!?

そこは…ええ!!? 


櫂は玲くんと間接キ…「違う!!!」


思わず怒鳴った俺。


そして――


「痛いっ!!!」


そこに俺は歯をたてた