櫂Side
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「櫂、僕は…必ず事態を好転させてみる。


だから頼む。芹霞のこと」



そう微笑んで、玲は…七瀬と共にベッドに横になる。


隣に立つ朱貴が何かを唱え…懐から出した小瓶から、透明な液体を2人の身体に振りかければ…甘い匂いがした。


「ただの催眠香。害はない」


「玲くん…紫茉ちゃん…」


ベッドの傍らで立ち膝をつく芹霞は、心配そうに…2人の手を取り、握りしめていた。


俺は…唇を噛んでいた。


玲が危険を冒すことを止められない自分。


それを玲の意志故だと片付けられないのは、俺の弱さ。


玲なら…状況を打開してくれるかもしれない。


そう甘えてしまう、俺の弱さ。


「そんな顔するなよ、櫂。大丈夫。いつだって僕は…切り抜けてきただろう?お前と共に…」


「……そう、だな」


「朱貴さん。夢からの現実への伝達は…可能ですか?」


「それは紫茉次第だ。紫茉が繋ぎとなっているからな。紫茉の力が弱まっていなければ、お前の身体か…紫茉の身体のどちらかから、それなりの反応は返ってくるはずだ」


それを聞いた玲は安心したように微笑んで。


「由香ちゃん、もし何か言ったりしたら…書き留めていてくれないか?」


「判ったよ、師匠。それしかボクはお手伝い出来ないのが心苦しいけど」


遠坂の眉は八の字だ。