俺は訝しげに目を細めながら、言った。
「ああそういえば。お地蔵さん…野犬…、俺…芹霞迎えに行った南千住…いや、小伝馬町に来ていたか、そんな残骸に行き当たったな」
――昨夜…野犬の声と何かの絶叫が酷かったわよね…ああ、気味悪い。
確か、オバサン達が話していたはず。
「何か…関係あるのか? だったら…突然湧いた"生ける屍"…は、七不思議と無関係ではないと言うことか?」
俺達は顔を合わせた――…のが、耐えきれなかったらしい小猿が、
「葉山、葉山~!!! 聞いてくれよ、俺の話!!!」
間を裂くように割って入る。
桜は面倒というように一瞬顔を顰めさせて、そして小猿に向き直って。
「何だ、私に用があるのか。手短かに話せ」
クール過ぎるのも残酷だ。
正面切って桜に構えられた小猿は、言葉を呑み込んでしまった。
「私はこれから櫂様方の処に戻って報告したい。何だ? 何の話だ?」
ずい。
桜が前に足を踏み出すと、
「ワ…ワワワ、ワンコの馬鹿~!!!」
俺をばしばしと叩いて、走り去ってしまった。
「……。何だ、あいつ…?」
桜は判らないらしいけど…何だか俺はあいつが哀れで。
「桜、お前は櫂の処に帰れ。俺は小猿捕まえてから戻る……ううっ」
暫し忘れていた吐き気を催す。
どうしてだ?
突然、何で暴れ出す?

