更に玲くんの目が細められた。
そして――
繋いだままの手を上に上げると…あたしの手の甲に唇を寄せる。
熱い唇の感触が、手の肌から伝わり…予想外の出来事に、反射的にあたしの顔が沸騰した。
「な、なななな!!?」
それだけではなく、玲くんは…ゆっくりと舐め始めたんだ。
艶かしい…赤い舌が見え隠れする。
肌に感じる直の熱さ。
くらくらする。
のぼせそうだ。
「れ、玲くん!!? やだ、何!!?」
あたしの手は強く固定されてびくともしない。
玲くんは――
そのまま…挑発的に櫂を見ていた。
今まで櫂に意地悪することはあっても、此処まで反抗的な…攻撃的な目を向けることがなかった玲くん。
…"約束の地(カナン)"以来かもしれない。
だけどあの時は、櫂が正気でなかったからで。
玲くんは、緊急事態の回避に必死だったからで。
じゃあ、何で今、玲くんは必死なの?
唇を離した玲くんは、櫂に威嚇するように低い声で言った。
「お前は…それでもいいと言うんだな?」
玲くんの真意があたしには見えてこない。
言葉の意味が判らない。
だけど、確実に櫂には"何か"が届いているようで。
櫂は――…
動かなかった。
ただ、端正な顔に悲哀の色を濃くしただけで。
弱弱しく、漆黒の瞳が瞬いただけで。
「……行くぞ」
何事もなかったかのように。
櫂はあたし達にくるりと背を向けたんだ。

