櫂と玲くんが話していると、桜ちゃんがやってきて。


煌を探しに行くという桜ちゃんと別れて、あたし達は保健室に戻ることになった。


破られていた符呪。


それが凄く痛手に感じる。


「桜が…裂岩糸が千切られていたって言ってたな」


櫂が訝しげな声を出す。


「そして校舎に…"あの女"が乗り込んだ。やはり…偶然とは思えないな。"あの女"の出現は」


必然だとしたら…その意味は何?


「"彼女"だけではないよ。結界内部において、櫂の気づかないまま符呪が破られている。聞こえてきた奇妙な叫び声といい、何か…起きているね。まあ…起きてこないほうがおかしいのかもしれないけれど。少しずつ…その姿を見せ始めるか」


玲くんが固い声を放つ。


「見てごらん。彼ら、さっきまでは窓ガラスに張り付いていたのに…今は、弾かれたようにある一定の距離を保っている」


「ど、どうしたのかな…?」


あたしは"櫂に"聞いた。


ずっと右側に立つ櫂に向けているあたしの顔。


首が痛い。


左側の玲くんから、視線を感じる。


凄く感じてはいるんだけれど…


顔が…見れなくて。


――僕、紫堂玲は…神崎芹霞が好きです。


ストレートにそう言われてしまったら、どう反応すればいいのか判らなくて。


今、考えるべきコトは櫂だ。


なのにどうしてそんなことを言ってきたのか判らない。


優しい玲くんなら、櫂を優先させるはずなのに。


嬉しいとか恥ずかしいとか、そんな感情より真っ先に湧き上がったのは、あたしの事情は後回しにしないといけない、ということ。


今日中にどうにかしないといけない中で、好きだの嫌いだの…そんなこと言ってる暇も余裕もないはずだ。


だけどあたしの身体はかなり過剰に反応を示すんだ。


あたし、ここまで自分が単純馬鹿だと思わなかった。


――君の…心が欲しい…。



玲くん…何て爆弾を投げて寄越したんだろう。


あたし恋愛初心者だって判っているでしょう!!?



「どうした、芹霞?」



怪訝な顔をした櫂。


あたしは、儚げに笑うこの幼馴染を何としても助けたい。


今は私情は禁物だ!!!