*****************


まただ…。


またこいつらが現れた…。


櫂が異常を察知して、あたしを連れて足早に階下に降りた時、窓に張り付いた"奴ら"に思わず仰け反った。


だけど…全身の毛穴が全て開いてしまう程の激しい衝撃や、戦慄は覚えなかった。


思えば…、煌に連れられて中庭で上岐妙を目撃した時、


その異常な様を見た時…

或る程度は…無意識なりとも予感していたと思う。


だから「ええ!?まさか!!?」の意外性は高くはないものの、やはり屍は何度見ても歓迎できるものではない。


隣に櫂がいなければ、多分あたしは逃げ惑っていただろうけれど、気弱でおかしなことを言い出しても、櫂様スタンスは変わらなかったから、あたしは落ち着いていられる。


櫂が居れば、いつも通り大丈夫だと。


凛然と毅然と、あたしを連れ歩く様は、あたしの心を平定させる効果があるんだ。あたしはきっと、思っている以上に、櫂に依存しているのだろう。


――芹霞ちゃあああん!!


悔しいけれど。


それは皆同じ。


櫂を助けたいのは皆同じ。


櫂を死なせたくないのも皆同じ。


だけど…あたしは皆以上に、櫂を守りたい。


皆以上の思い出が、あたしと櫂の中にはあるから。


あたしが居るのに、櫂に憂えた顔を…悲しい思いをさせたくないんだ。


櫂を誰が殺させるか!!!



――芹霞ちゃあああん!!