桜Side
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張り巡らせた糸が…

切れていた。



桜華を見廻り途中、所々の糸が力任せに引き千切ったかのような切れ端を覗かせ、私は大いに訝った。


私の糸は、裂岩糸。


普通の糸とは違うモノ。


これは私の想念によって形になった武器で、私が"仲間"と認めぬ者が、糸に手を触れただけで、すっぱりと指が落ちる。


それが裂岩糸による、私の結界だ。


どうみても、指の欠片も、血痕もなく。


ただ糸だけがぶつりと切れているなんて…前代未聞のことだ。


切れた糸から、その人物を特定出来るだけの"気"は感じ取れない。


考えられることは2つ。


私の力を遙かに上回る存在が千切ったのか。


あるいは。


私が"仲間"だと認めているものが千切ったのか。


後者はありえない。


櫂様、玲様、遠坂由香は共に情報処理室に居て。


馬鹿蜜柑と芹霞さんは第二保健室。


仮に遠坂由香に植え付けられた、"三尸"だとかいう奇妙な虫が…私達の中に居たとしても…ありえない。


遠坂由香と芹霞さんは力のない素人だが、私達は"異変"を感じ取れる。


更には。


そんな虫など入れられる状況にない。


もしも黄幡会にて、私達が捕まっている時に植え付けられたとしても、少なくとも自分自身、何らかの"異常"はみられるはずだ。