「凄く…会いたかった。メールなんかじゃ物足りなかったよ。本当に…君に会いたくてたまらなかったんだ」
吐息交じりの哀しげな声。
端麗な顔に浮かぶ翳りが、冗談だと思えなくて。
「君は、僕に会いたかった? 僕だけに…会いたいと、せめて声だけでも聞きたいと…思ってくれた?」
そうであって欲しいと、懇願されているような錯覚。
あたしはどう反応していいか判らず、ただドギマギするばかりで。
だから、免疫ないんだってば、そういうの。
黙したままのあたしの返答を、玲くんは"否"と取ったらしく、
「そう――…簡単には上手く行かないね」
儚げに笑って、静かに目を伏せた。
「早く君と"お試し"出来れば、何かが変わるのかな。
"約束の地(カナン)"の時みたいに、もっと堂々と宣言して、自覚を促せば…僕を見てくれるのかな。
君さえよければ――
僕は君を離したりしないのに」
見上げられた鳶色の瞳。
いつにない強い光に、目を逸らせなくなる。
惑わせられる。
冗談なのか、本気なのか。
追い詰められている気がする。
いつものように微笑んでくれていたら、ここまでの切迫感は感じなかったろう。
「ねえ、芹霞。
僕が…君を好きだって言ったこと
冗談にとってない?」
さらりと鳶色の髪を揺らしながら、端麗な顔は苦悶に歪む。
そこには一切微笑みがないから――
あたしは、思わず身を強張らせた。
「冗談に…しないで?」
そう、あたしの手を取り――
何かを訴えるように、ぎゅっと握りしめた時。
「俺の時は邪魔しておいて、ざけんじゃねえぞ、玲!!!」
何かが猛速度で飛んできて。
玲くんが軽く顔を傾ければ、元あった彼の頭の位置にフライパンが飛んできた。

