「――ぶはっ」
息が続かなくなったあたしは、煌の唇から口を離して、肩でぜえぜえ息をする。
「はぁはぁ…」
荒い息をしているのは煌も同じで。
静まり返った中、妖しい呼吸が響き渡る。
「…鼻で息しろよ。初めてでもあるまいし…」
ぶすっとしたような声が聞こえる。
「何で不機嫌?」
思わずむっとしたあたしに。
「そういうことくらい、俺がリードしたいのッッ!!!」
男の矜持と言う奴か。
思わず鼻で笑ってしまった。
「ああ、ムカツクなお前!!! そういう"どや顔"は、もっとディープなものなものにしてからしろよッッ!!!」
「な、あたしのキスに不服なの!!?」
そう睨み付けた時。
「まさか。
お前からって言うの、凄ぇ嬉しい」
綻んだように、煌は笑った。
凄く凄く、穏やかな優しげな笑みで。
見ているこっちまで幸せになりそうな、そんな微笑。
それが…やがて"男"の色気に包まれていけば――違う意味で心臓が跳ねて止まらない。
うわ、何でこんな表情見せるんだ、このワンコ!!!
やばい。
その笑顔は反則過ぎる!!!
あたしの、
あたしの鼻に違和感が!!!
「深いのは…今度な?」
駄目だ。
あたしは初めて――
煌相手に鼻血を出した。
不覚。

