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「イチルちゃん。イチルちゃんは何でいつもそのお洋服なの?」


櫂がイチルちゃんに聞いた。


「私ね、黄色が大好きなの。カイカイは何色が好き?」


悪ガキ共を何度も撃退していれば、やがてガキ大将は全面降伏をして、その公園をあたし達専用に提供してくれた。


平和な日々の中で、あたし達に打ち解けた態度をとるようになったイチルちゃんは、櫂のことをカイカイと呼ぶようになった。


「僕? 僕はね…」


そして櫂は、あたしを見上げると天使のようにふわりと微笑んだ。


「僕はピンク!!!」


「あれ、櫂ってそうだっけ?」


思わずあたしが聞き返してしまった。


ピンク色が好きなのはむしろ――


「うん。芹霞ちゃんが大好きな色だから、僕も大好きなんだ!!!」


ああ、何て可愛い櫂。


あたしは思わず櫂をぎゅっと抱きしめた。


とても柔らかい温かな体。


お日様の匂いが鼻腔に拡がり、胸が更にきゅうきゅうする。


櫂のすべすべほっぺにあたしの頬を押し付け、すりすりした。


「芹霞ちゃん、髪の毛がくすぐったいよう」


はにかんだように笑いながら、それでも拒まない櫂。


可愛い。


最高に櫂は可愛い。