此の世で一番の幸福は何か。


そう問われたら――

私はこう答えるだろう。


夢だと気付かない夢を見続けること。


一切の願いを網羅し

どこまでも希望に満ちて。


不可能なことなど何も無い、全能の世界。


"現実"に何より近くて、

遙かに遠く乖離している――


そんな…醒めない夢を見ること。


あの人は笑った。


夢と現(うつつ)は二律背反だと。

背中合わせの関係だと。



ならば――


現の延長上に夢がないのなら。

夢の延長上に現がないのなら。


私は何処までも現実に逆らって

何処までも夢に従順に生きるだけ。



現実なんていらない。


苦痛なんてもういらない。


幸福になりたい。


願い続けるのは、罪ではないはずだ。



私は、永遠に夢に生きよう。


螺旋に続く輪廻の如く――

何処までも何処までも。


至上の幸福を求めて。