「紫茉ちゃん…格好いい…」
芹霞の目が"はあと"だ。
七瀬…世間知らずかと思いきや、戦い慣れてやがる。
朱貴は無論、小猿だって、体術…中々のものじゃんか。
何だよ、こいつら一体何なんだ?
興味を持ったけれど、景色は薄れていくばかりで。
その中で、七瀬が笑って手を振った。
「明日朝一番に、精が付く豚汁作って保健室に持って行くから!!!」
こんな状態で…豚汁、ね…。
やっぱり…七瀬はちょっとずれているのかもしれない。
何か、笑えた。
こんな時だから、笑ったら…元気が出た。
皆もそうらしい。
続けて、切羽詰まったような小猿の声が聞こえた。
「葉山、葉山、俺お前が好…」
しかし途中で、無情にも景色が切り替わり。
そして――
目の前に…洞窟が広がった。
「さあ、行きましょうか」
無表情のまま、桜が先頭に立つ。
ちょっと聞いてみたくなった。
「なあ桜、今の小猿の言葉さ…」
馬鹿小猿は、桜に告ろうとしたんだろう。
何焦ってるんだろう。
本当空気の読めない奴。
…何だか俺と似ている…いやいや!!! そんなことはありえねえし。
「???
あの男が何か言ってたのか?」
哀れ小猿。
桜はちっとも興味がないらしい。
今は先導する小猿はいないけれど、道に赤い印が点々と続いていて。
「櫂、何処に行くの?」
芹霞が聞いた。
「少しだけ…我侭を言っていいか?
こんな時に、とは…思うんだが」
暫くの沈黙の後、櫂は俺達に言った。
「俺は――
…緋狭さんに…会いたい」
吹っ切れないのは俺も同じだ。
俺も――
紅皇ではなく、緋狭姉と話したい。
櫂に反対する者はいなかった。
ここを抜ければきっと…
「緋狭姉…」
緋狭姉が待っている。
そんな気がした。

