「ふうん。違うこと考えても…002は僕の相手が出来るわけか。…面白くないね、そこまで虚仮にされちゃあ」
チビの声がした、僅か数秒後。
「本当に…面白くありませんことね」
びくんとして、朱貴の相手をしていた桜が振り返る。
「私まで駆り出されるなんて」
チビの口から、甘ったるいロリ声が響いた。
まるで以前の桜のような喋り方。
そして取り出したのは――
「雅!!? ワンコ、逃げろ!!!」
銀色の環。
鉄環手、だろう。
「雅、凱!!! 俺はワンコに攻撃されていない。守らなくても…」
「何をほざいておりますの、翠様。誰が貴方をお守りするが為に、この者の相手していると? 冗談も大概にして下さいませ」
俺…
小猿が可哀相になってきちまった。
「雅と申します。かつての制裁者(アリス)では、002と相見えることはございませんでしたが…以後、お見知りおきを」
それは優雅な挨拶の後。
両手に3つずつ用意した鉄環手を俺に放った。
その動きは不規則で。
上下左右ぶれながら、一斉に俺目がけてきた。
「煌!!!?」
桜の声。
裂岩糸が鉄環手に伸びた瞬間、朱貴の手刀が桜の脇腹を抉り、桜の姿勢が崩れた。

