僕は冷たいタイルに背中をつける。
痛くて痛くて熱を持つ背中に、タイルの冷たさは気持ちよくて。
冷たさにまた、ずきずきと痛む。
「芹霞…」
僕の声は、いつも以上に切なく反響して。
より一層、心が疼いた。
「芹霞……好きだよ…?」
口にすると、尚一層自覚してしまう。
滾る想い。
焼き付く胸の内。
今にも熱いものが溢れ出て、僕を溶かし尽しそうだ。
そこまで深く、僕の身体に刻まれた芹霞という存在。
そんな状態で、どうして芹霞を拒めると思っていたのだろう。
櫂を守りたかった。
芹霞を守りたかった。
だけどそれは…結局は僕だけの自己満足。
現実はそんなに甘くはなくて。
渡したくない。
櫂にも煌にも久涅にも。
好かれていたい。
愛されたい。
――玲くんなんて、大嫌い!!!
ずきん。
ずきん。
痛いのは、背中なのか…心なのか。
君は今、何を思っているのだろうか。
僕のことなんか忘れて、櫂のことを思っているの?
そうだよね、君の心は櫂ばっかりだもんね。
君を避けていた理由を知っても尚、僕を嫌ったまま…このまま行くつもりなの?
僕なんか、どうでもいい?
僕とはもう…終わり?
――ああ…!!!
気狂いそうだ!!!
僕は濡れた髪を両手で掻き毟った。
「芹霞――…
僕を…嫌わないでくれ。
せめて…前みたいに…僕に笑顔を見せてよ」
そう――呟いた時だった。
「玲くん、ごめんなさいッッ!!!」
突然芹霞が、風呂場の扉を開けて飛び込んできたのは。

