僕は――


櫂だから傅くのであって、櫂に似た男に傅く気はない。


櫂という存在が大切だから、今まで櫂に仕えてきた。


紫堂という次期当主に、仕えたいわけではないんだ。



――力尽くで、言うことをきかせてやろうか。


――僕をなめるな!!!



僕の電磁波は…久涅の前で無効化され、体術は久涅の速度と威力に敵わなかった。


まるで五皇を相手にしているような強さ。


――さて、玲。体に恐怖を刻み込んで、言うことをきかせてやるか。


久涅の顔には残忍な笑いが浮かぶ。


久涅は僕のズボンからベルトを引き抜くと、それを緋狭さんに手渡した。


――緋狭。これで玲を打て。


一瞬、緋狭さんの顔が曇る。


――忠誠の証をたててみろ。


そうして久涅は僕の服を破いて、僕の両手を掴んで俯せに倒した。



そして重なる両手を足で踏み付け笑った。


――緋狭。出来ぬなど言わぬよな…?



緋狭さんは――


僕の背中にベルトを振るった。



僕は――


緋狭さんにやられているのか。



背中の皮膚が破ける痛覚よりも、信じられない現実に、僕の心が苦しみ…だから僕は声を上げた。


何度も緋狭さんの名を呼ぶ。


母のようであり、姉のようである…緋狭さんの名を。


いつもいつも、僕を見捨てずに救い続けてくれた、緋狭さんの名前を。


だけど緋狭さんは――

久涅がいいというまで、僕を叩き続けた。


背中が燃えるように熱くて。

息が出来ないくらいに痛くて。


見ないでも判る。


僕の背中の有様が。


それ以上に…僕の心はぐちゃぐちゃだった。