『願い求めよ。

さすれば我は汝等に与えん。


さあ……求めよ。

汝の願いは如何に?』



あのルーツは、一縷なのか。


一縷は、叶えられるだけの力があったというのか。



「それからよ、一縷は相当な写真嫌いだったらしい。写真を隠し撮りした男が相次いで事故にあったとかで、皆怖がって…写真は一切残ってはいないらしい。長い黒髪の美女っていうことくらいしかわからない」


藍鉄色の瞳が、弱弱しく揺れる。



「エディターとかいう女だけど…俺さ、あの女…一度会ってるわ、高等部で。紫茉の話じゃ高校3年らしいけどさ、あの女…すげえ虐められていたんだよ」


「いじめ?」


「たまたま通り掛ったんだけどよ、校舎裏で…女の集団からバケツの水かぶせられていてさ。だけど変なんだ。へらへら笑って気味悪くてさ、ぶつぶつつぶやいているんだ」


――私には、王子様が助けに来てくれる。


「追い詰められていたからなのかもしれないけどよ、あの女の様子なら…虐められても仕方がないかなって気さえするよ。だけど女って怖いよな。エディターを虐めた主犯格って…同じ高3の、今年の…ミス桜華候補だったんだからさ。おしとやかそうな顔して、やることは酷い。

そういえば明日か、ミス桜華の発表は。一縷がいないなら、きっと昨年度次点だったあの女が繰上げなんだろうな」


それか。


――明日の桜華は見物だよ?



氷皇の示唆したのは。



そんな時だった。


パソコンから短い電子音がしたのと、鍵をかけていた玄関のドアがガチャリと開いた音がしたのが同時にしたのは。