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俺達の知らない処で、紫堂と皇城が繋がっていたというのは、現時点においてはただの1つの可能性だ。


周涅という男と凱という元制裁者(アリス)が共に消息不明、更に凱というくせ者が紫堂当主と組んだ黄幡会側にいたというのが、その可能性に至った大きな要因。


もしも周涅もしくは凱の帰還をもって、彼らの無実を証明できたのなら、その可能性は消え去るだろう。


だがこの家は、盗聴器が仕込まれていることからも、何らかの理由で監視下にあるのは事実だ。


せめて"事情通"の朱貴が此処に居れば何か判ったかもしれないが、彼は帰ってくる気配がなく。


五皇や久涅と因縁めいた雰囲気だったが…彼ら相手での帰還は、簡単ではないだろう。もしかすると…帰らない危険もある。


七瀬と翠だけでは、彼らの取り巻く状況がよく判らないし、もし仮に何かに追われているのだとしても、今の俺にはどうしてやることも出来ない。


時間がなさすぎるから。


だからせめて、温情を示してくれた彼らの為に出来ることは、2時間後にこの家を出て行くこと。


それ以上の紫堂と俺との確執に、彼らを巻き込まないことだった。


紫堂と皇城が繋がっているという可能性が消えない限り、彼らが俺達に家を提供して協力体制でいる限り、紫堂皇城双方の攻撃を受ける羽目になる。


それだけは免れたかった。


七瀬紫茉は、俺が東京から疎外されているのを事前に知り、黄幡会に直談判に行った。


皇城翠は、式神を使いながら…芹霞と煌と共に、塔に捕えられていた俺達を助けてくれた。


かつて翠は俺達に牙を剥き、尚且つ大切な"兄上"を豹変させたのが、俺でないにしても…紫堂かも知れないという疑惑が膨らむ中で、それでも味方でいてくれたという事実は、忘れてはいけない。


無鉄砲の2人ではあるけれど、好意を覚えてしまっている今、不用意な闘いに巻き込みたくはない。


これは――俺の、身内の喧嘩だ。


それでも渋る2人に、俺達は精一杯の感謝の笑顔を見せて、時間になったら家を出る覚悟を決める。