「それから…櫂様」
桜が頭を下げて俺に言った。
「木場公園にて、私は聞きました。
…その、所謂君悪い"ロリ声"と」
思い切り、翠を睨み付けながら、
「"王子様"という声。
"イチル様"という声を」
俺は目を細める。
「"王子様"っていうのは…上岐妙…エディター?」
芹霞が首を傾げた。
「櫂達を拉致したのは…彼女が関係あるんだ。まあ黄幡会側であるなら、不思議ではないだろうけれど。だけど何で"イチル様"? 元教祖とはいえ、死んだはずでしょう、彼女!!!」
――馬鹿な奴らだ。さっさと仕事をしていないからこんな目に遭う。
どうしても…"イチル"に関わらせたいのか。
――氷皇。
そしてその上で。
俺は――
今一度神崎家に行かねばならない。
――久涅様は特別なのだ。
緋狭さんは、きっと待っている。
そんな気がした。

