「チビ?」


「ああ、一応俺の護衛なんだけれど、守ってくれたことがないんだよ。電話だって、"あ、間違えた"それでブツッ」


随分と…部下に苦労しているんだな。


だから俺を羨ましげに見ていたのか。


俺には――


命を張って俺を守ろうとする奴らばかりに囲まれているから。


七瀬の凛とした声が響いている。


「神出鬼没で、あたしも数回しか顔を合わせたことがないんだ。凱と雅って言うんだけどさ。身なりは7.8歳だけど、実際はあたし達より年取ってるらしい。"ヒシュ"だとかいう小さい剣を持ち歩いた物騒な奴だ」


その時、桜と煌が顔を見合わせて。


「小猿。そのチビ…元制裁者(アリス)、のか?」


今度は俺と玲が顔を見合わせた。


俺達が芹霞の家に行った時、確か煌と桜が相対していたはず。


「え? 制裁者(アリス)? 殺戮集団…はあ!!? やばい奴だと思ってたけどあいつ…そんな素性だったのか!!? そんなのを皇城が、俺の護衛になんて…はあ、俺…余程どうでもいいんだな」


項垂れた翠を見て、俺は1つの疑問を抱く。


「なあ。七瀬は"凱と雅"と複数形で言ったのに、何でお前は単数形だ?」


"チビ"


"奴"


"あいつ"



「ああ、肉体は1つなんだ。普段は凱。双匕首っていう武器持ち歩いて、たまに雅に変わる。雅は鉄環手っていう環の武器を持っている」


家の中に突如飛び込んできた環。

あれは雅という者のものか。