「どういうことだ?」


七瀬が眉を顰める。


「この派手な荒し方は"見せしめ"の意味が強い。

つまり。お前達が俺達を手助けをするという前提で、前もってなされたものだ。

俺達が必ず此処にくることを見込んだ上で、俺達を精神的に追い込もうとしていたんだろう。


言い方を変えれば」


俺は翠を見据えた。


「お前達を使って、そうなるように仕向けられていた、とでも言えるのかもしれん」


「はあ!?」


翠が素っ頓狂の声を出した。



「小猿が家に居る時は襲わないで、出た途端…ってな感じだな。この時刻…芹霞と丁度木場公園で小猿と桜の携帯で話していた頃だし。ああ、そうだ、芹霞。桜に携帯返せ」


「ああ、そうだ。忘れてたよ。はい、桜ちゃん。ありがとうね、落としていてくれて」


「え…? あ…私、携帯落としていたんですか?」


「え? じゃあ自然落下だったのか。ラッキーだったね、煌。あんな草の茂みに落ちていて、あそこで小猿くんからの電話なければ、携帯が見つからなければ、櫂達が黄幡会に拉致られたかもっていう情報得られなかったし」


それは――


「出来すぎだな」


俺は目を細める。


「まず、桜の携帯。緋狭さんが居て、携帯を落としたことに気付かないわけないだろう。そこまで彼女は抜けてはいない。しかも見つかりにくい場所に落ちていたんだ。そして、芹霞と煌がそれを見つけられたのは翠からの電話。お前が電話をかけたきっかけは?」


翠は途端に真っ赤になって、ちらちら桜を見始めた。

俺を含めてそんな翠に怪訝な顔を向けたが、芹霞と煌だけは顔を見合わせて苦笑している。


そして何か口を開こうとした翠は、突然手を叩いた。


「ええと、チビから電話かかってきて。それであ、電話っていう手段があったなと思って」