櫂Side
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「な、何だよ、これは!!!!」



案内された広尾のマンション。


玄関のドアが開いていたのに訝りながらも、室内に入った七瀬と翠は…大声を上げた。


散乱している物品。

廊下も室内も、床は泥まみれ。


特に居間は足の踏み場すらなく。


窓は壊され、壁は皹が入るといった惨状で。


「な、なななな!!!」


七瀬は座り込んだ。


多分――

俺のせいだ。


俺に協力したから…

彼女達の家が荒らされたのだろう。


警告だろうか。


「どの部屋もそうだ、荒らされてる!!」


ばたばたと駆け回った翠が声を上げた。


「すまない、俺のせいで…」


そう顔を伏せた時、


「櫂、待て。床に落ちている置き時計…時間見てみろ」


床に屈んで時計を指差した玲。


時計は午後を少し過ぎたところで止まっていた。


「ねえ。君達は、黄幡会に行くまでには、何かおかしなことはなかったのかい? こうされる、心当たりがある?」


七瀬と翠は、顔を見合わせながら頭を横に振って否定する。


「あたしが向かうまでは至って普通だった」

「俺も、黄幡会に行くまで普通だったぞ」


玲は鳶色の瞳を光らせる。


「君達が僕達に協力をしたということで…紫堂の確執に巻き込まれたとして。だけど、時計が示す時間は…"ゲーム"が始まる前。状況的に、早すぎるんだ。理屈に合わない。これならばまるで…」


玲は俺を見る。


「ああ。こいつらが俺を手助けをすると、あらかじめ判っていたかのようだ」


俺が続ける。