「緋狭。お前が仕えたい、紫堂の次期当主は誰だ?」


更に。


追い打ちをかけるような言葉が聞こえて。



「久涅様です」



彼女は――


櫂様が身分を剥奪されたことを知っていて。


あんなに可愛がって面倒をみてきた櫂様を…見捨てたというのか。



久涅の何処が櫂様に勝る!!?


櫂様は、櫂様こそが相応しいと言うこと、判るじゃないか!!!



そして櫂様が次期当主ではなくなったから。



だから――


櫂様の命を奪う側になると、そういうのか。



「久涅様以外、認めません」



緋狭様の強い言葉に、櫂様は――びくりと体を震わせた。


その顔は、あまりの悲痛さに崩れてしまいそうで。


それを振り切るように、櫂様は首を横に振られた。


「幻覚とでも思っているのか? 此の場の出来事は全て幻と? ははは、現実逃避か。どうだ…皇城の次男、先刻から見ている"それ"はどう映った?」


久涅から、突如向けられた矛先は。



「幻、じゃねえよ。現実だ。


…此処で起きていること全て」



皇城翠は、"それ"…鏡を握りしめながら、悔しげに言った。



私達の救いの道は――


閉ざされたのか?