「……氷皇…」
「ああ、ワンワン~。さっきぶり~!!! チビ猿くんと逃げ出せれてよかったね~、誰のおかげかな、あはははは~」
ああ、うるせえ。
またいつもの如く、"自分"を誇示して、謝辞求めやがって。
「ねえねえ、誰のおかげかね~、逃げ出せたの」
「……」
「ねえねえ?」
「……」
「ワンワン?」
ああ、うるせえ!!!
「ああ、お前だ、お前のおかげだ。それでいいか、いいだろ!!? ちくしょう」
もうヤケクソになって怒鳴った。
「何かひっかかる言い方だけれど。よかったよね、偶然俺が通りかかって。そうじゃないと、今頃ワンワンの野垂れ死にだよ? 偶然に乾杯~」
偶然なんかじゃねえだろうさ!!!
またお前、何企んでるんだよ!!!
そう睨みつけていた時。
俺の視界の中でぷるぷると震えている奴がいて。
小猿だ。
小猿が氷皇を見て、指差して体を震わせている。
何だ?
小猿の痙攣?
突然――
「お前、何でこんな処にいるんだよ、
――周涅(すぐり)!!!」
そう叫びだして。

