「悪いが――
俺が欲しいのは慈悲ではない」
櫂が、喉元で笑った。
「俺が後継に相応しいという、確固たる証拠だ」
次期当主としての復活。
櫂は、堂々とそれを望んだ。
「俺は兄上よりも紫堂を拡大できる」
「随分な自信だな、櫂」
久涅は、忌々しげな顔つきをする。
同じような端正な顔が激しく睥睨し合う様は、圧巻過ぎた。
「チャンスを上げればよろしいのでは?」
初めて…聞く声だった。
突然場に現われたのは…
1人の男。
上岐妙と同じ制裁者(アリス)の服を着た、長めの髪を後ろに流して。
女と見間違うような酷く綺麗な…優麗な顔つき。
ただ…
左目は黒い瞳。
右目は碧の瞳。
両目の瞳の色が違う、オッドアイ。

