煌Side
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ありえねえ、ありえねえ!!!


櫂が…何でそんな目に遭う!!?


BR002。


かつての俺は、紫堂の実験体だった。


名もなく家族もなく。


殺戮集団たる制裁者(アリス)として機能を果たす為に

藤姫の邪な残虐性を満たす為だけに


俺は作られていた。


緋狭姉に出会い、緋狭姉が制裁者(アリス)を壊滅させても尚、薄れた記憶の中での"実験"場面は憎悪として身体に強く刻み込まれ、それはまるまる"紫堂"に向かう。


俺は紫堂が嫌いだ。


だけど。


――紫堂が、悪かった。


櫂だけは信じられる。


初対面で、取り繕いもせず、横柄な態度もとらず。

ただまっすぐ俺に向けた憂いの含んだ切れ長の目。


俺に殴られても抵抗せず、ただ俺に深く頭を下げた櫂。


9歳そこらの年齢でも、それは屈辱的なことだろう。


櫂が悪い訳じゃねえ。


だけど迷い無く頭を下げ続ける櫂の姿に、俺は…ガキながらも俺と比較にもならねえ器のでかさを感じた。


櫂なら――。

紫堂を変えられると、俺は思った。


別に紫堂など滅んでしまおうが一向に構わないけれど。

だけど櫂が作る紫堂の未来なら、一緒に見てみたいと俺は思ったんだ。


紫堂がどう変わるか、興味を持ったんだ。


俺は櫂という存在に心酔し――

櫂と共に8年間を過ごしてきたんだ。


俺が仕えたいのは紫堂ではなく、櫂というただ1人の人間。


俺にとって紫堂など、愛着はさらさらない。