いきなり核心か。
泣けてくる。
芹霞の返事など、判っているから。
だから――
「櫂は…
幼馴染以上の大事な存在です」
ゆっくり。
ゆっくりでいいから、前に進もうと。
少しずつ、踏み込んでいこうと。
だけどそれは。
俺だけの自己満足的なものだと、判っていた。
現実を…認めたくないから。
実際の俺は、焦るにいいだけ焦り、
他の男達に芹霞を渡したくないとただ必死で。
そう、12年経っても俺の想いは、
一方通行だと判っていればこそ。
「男として、愛しているか?」
もういい。
やめてくれ。
これ以上――
「それは……」
俺を惨めにさせないでくれ。
言い淀んだ芹霞に、俺の想いが悲鳴を上げた。
太股を掴んだ俺の指先に力が籠もる。
親父は俺を見た。
「櫂。私は言ったはずだ。
想いを告げるなと」
――約束します、父上。
ああ――。
「所詮、お前などその程度の力量だったのだ。言葉にしないと状況を打開できぬ。そして言葉にして、何かを変えられたか、櫂」
それは。
俺にとって痛い言葉。
俺は目を閉じ顔を背けて、
「いいえ」
そう言うしかなくて。

