櫂Side
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「何で――…


紫堂の警護団が、俺達を襲う?」



見間違えるはずがない。


長年、本家で顔をあわせてきた仲だ。


紫堂本家から消えた警護団幹部達が、揃って俺達の敵側に回っている。


どういうことだ?


「控えよ!!!


お前達――…

櫂様を見忘れたか!!!?」



桜が大声で怒鳴った。



「恐れながら団長」



片手で警護団の全ての動きを制し、桜に頭を垂らして前に進み出たのは、



「我ら警護団。紫堂当主の命を受け、次期当主をお守りするように申し付かっておりますれば」



紫堂警護団、副団長。


童顔の男。


桜ほどの腕はないが、中々の実力者だ。


「ならば何故!!?


何故に紫堂の次期当主に刃を向ける!!!?


狂ったか、お前達!!!」


いつも寡黙で無表情の桜が、煌以外の人間に、ここまで声を荒げたのを見るのは、初めての気がする。


「いいえ、狂ってなどおりませぬ。

これも命令を遂行したまで。

だから――

次期当主をお守りしておりまする」



何度も何度も繰り返す。


正式な次期当主たる俺の前で。


己の欲を顕示させてその肩書きを欲しがるだけの…俺と似ている兄だという男を、次期当主だと言うのか。


そう信じるのか。