「!!!」


櫂が動く気配を感じ、僕は慌てて叫ぶ。


「櫂、お前は来るな!!!」


僕達の相手は遊びだと判るからこそ、櫂の本気の相手をさせるわけにはいかない。


櫂を闘いに巻き込んではいけない。


大事な僕の従弟を、傷つけるわけにはいかない。



「そんなこと言ってられるか!!!」



櫂の怒声が鳴り響いた。


「いいか、久涅。俺の兄だろうが何だろうが、俺を本気で怒らせるな。俺のものに傷つけるのならば、俺は容赦しない。紫堂の全勢力を使ってでも、お前を許しはしない。それでもいいのか!!!?」


くつくつ、くつくつ。


それは久涅から。


動きを止めて、高飛車に櫂を見つめて。



「紫堂の…全勢力、ねえ? まだお前は、次期当主だと思い込んでいるのか。紫堂の力を手中に収めていると」


くつくつ、くつくつ。



「だったら――


現実を思い知って、のたうち回れ。


俺はお前を――


俺に、紫堂に仇為す者として排除する」



その宣言した瞬間だった。



「!!!」


見計らったように、夥しい人間達が部屋に雪崩れ込んできたのは。


敵意。


僕達は臨戦態勢に入り、芹霞と皇城翠、由香ちゃんを守るようにして身構えた。


「制裁者(アリス)か!!? 此処の制裁者(アリス)ぐらいなら…」


煌の焦りながらも、安堵したような声。


違う。


桜華で僕達を襲った、あのレベルなんかじゃない。


僕は唇を噛みしめた。


これは。


この気は!!!



最悪の。


あってはいけない事態!!


やっぱり!!!?

何で!!!?


その狭間で、僕は叫ぶ。



「櫂、此処から出ろ!!!

此処にいるんじゃない!!!」



傷つけるな。

櫂を傷つけるな!!!



思い出すのは昨日の久涅の言葉。



――本当に、俺の一存だけだと思うか?