「どうだ、玲。

お前の意志1つで、櫂を助けてやるぞ?」


もしも。


もしもあたしの"違和感"が正解ならば。



――そうだ。


何よりあたしが取り乱していないのがその証拠で。



だとしたら。



怪しいのは…


近寄りたくもない、腐乱死体。



「さあ、どうする…?


――玲?」



「どうして…どうしてここまで櫂を!!!」



声を荒げた玲くんに、あたしは振り返った。




「玲くん、騙されちゃ駄目。


これは幻影だよ」



揺れる…鳶色の瞳。


半ば絶望、半ば怒りに満ちた端麗な顔が、あたしの言葉で驚愕に満ちた。



「その根拠は? 小娘」



感情を無くした切れ長の目を、あたしは真っ直ぐに見据える。



「"これ"に、櫂の気配を感じないのが理由1。

櫂があたし達に助けを請うたことが理由2。

櫂の…枷がついた四肢に櫂のもがいた痕がなく…綺麗なままだったのが理由3。

何よりあたしが正常のままでいられるのが、理由4。

櫂は自分で打開策見つけずに、ただひたすら誰かの助けを待っているような奴じゃない。何より自分の身と引き換えに、仲間を危険に曝すことはしない。

あたし…伊達に櫂と幼馴染していないの。

伊達に永遠を言ってないの。


あたしを見損なわないで」



そしてあたしは駆け、悪臭が凄まじい腐乱死体の元に行くと、極悪櫂に言い放った。



「あたしは。


櫂がどんな姿になっても、必ず見つけ出す」



そう言って。


あたしは――


腐乱死体を抱きしめた。



「――…櫂。


助けに来たよ。


――帰ろう?」



その頬に、唇を寄せて笑った。