それなのに、玲くんは…否定した。

玲くんにだけは否定されたくなかった。


あたしを判ってくれてると思っていたのに!!!


いつもそう思ってたの?

いつも滑稽に思ってたの?


だから、玲くんはあたしに態度を変えたの?

包み込んでくれた温かさは嘘だったの?


あたしの中の、優しい玲くんががらがらと崩れて行く。


いつからそういう風に思われていたんだろう。


――芹霞、好きだよ?


優しい微笑の影で、あたしは笑われていたのだろうか。


心地よかった玲くんの思い出は、夢だったのだろうか。


聡い玲くん。

優しい玲くん。


もうきっと…優しくあたしの名前を呼んでくれないんだろう。


玲くんにとって大事なのはあくまで櫂だけで、櫂の重荷になるあたしは邪魔なだけで。


邪魔なのに煩く動き回るから、玲くんは怒ったんだ。


身の程を知れ、と。


櫂に…あたしか玲くんか、どちらかを選べと言ったら、櫂は玲くんを選ぶんだろう。


玲くんの方が、遥かに櫂の理解者で、櫂の役に立つ。


玲くんの隣に居る櫂は、本当に安心しきっているから。


ああ、やだ。


あたし玲くんに、ヤキモチやいてるのかな。


それとも櫂に?


櫂を紫堂に取られて、玲くんにまで櫂を取られて。


そしてあたしは、玲くんまで失ったの?


あたしと玲くんの関係って、一体なんだったの?


櫂を介しない独立した関係だと、玲くんは"約束の地(カナン)"で言ってくれたけれど、結局そうだったじゃない。


あたしと玲くんの間には、絶対的に櫂が必要なんじゃない。