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あたしが知っている玲くんは。


意地悪で強引な処はあるけれど、それを遙かに凌ぐ優しい男性で。


いつもにっこりほっこり笑ってくれる、陽だまりのような男性で。


それはずっと変わらないものだと思っていた。


それが玲くんだと思っていた。



――君は櫂に近付くな!!! 近寄るんじゃないッッ!!! 過去がどうであれ、現在の君と櫂との間に確かなものなんて何もない!!!



玲くんがあんなこと言うなんて。


酷い、酷い、酷い!!!


あたしだって、自分が役立たずだということは判っている。


鍛え抜かれた肉体なんてないし、超能力なんてないし。


おまけにお荷物になってばかりで、逆に助けられてばかりの存在だ。


だけどあたしだって、昔と変わらず櫂を守っていたいし、心だけでも皆と同じに、櫂の騎士(ナイト)でいたいんだ。


現在も引き続き、あたしと櫂は離れがたい強い絆があると…確かにそれは、思い込みにも似た主観かも知れないけれど。

玲くんの言う通り、あたしなんかが今の櫂に近くにいることは、客観的に見れば烏滸(おこ)がましいことなのかも知れないけれど。


紫堂財閥の御曹司と、ただの平凡な庶民。


現実的にみれば、繋ぐものは過去というものだけで。


玲くんみたく血が繋がっていなければ、煌や桜ちゃんのように櫂を守るという肩書きを持っているわけでもなく。


櫂に消された、幼馴染という儚いものに縋っているだけかも知れない。


だけど櫂は。


それでもあたしを"永遠"だと言ってくれたから。

あたしに離れるなと言ってくれたから。


少しくらい夢みたっていいでしょう?


あたしだって、あたしにしか出来ない力があるかもって。

あたしだって、櫂を守る戦力となり得るって。