「櫂様は何処に!!?」


「僅かな…№5の思念を頼りにするならば、多分…この部屋の隣。あの壁の向こう」


「ね、ねえ…小猿くん。櫂…大丈夫だよね?」


芹霞さんが真っ青な顔で、皇城翠の腕を掴んだ。


「小々猿くんがやられちゃうくらいに強いのが傍に居るけど、櫂はちゃんと生きているよね!!?」


「……と思う。けど…断言は出来ない」


その言葉に、芹霞さんは顔を悲痛に歪めて、彼が指差していた壁に向かって、どんどんと拳で叩いた。


「開けなさいよ、開けなさい!!!

櫂、居るんでしょう!!? 櫂!!?」


この部屋は…式神が既に幻術を解いたから。


目に見える部屋の構成は真実なのだろう。

ということは、壁は矢張り壁で。


しかも厄介にもこの壁は。


力も武器の衝撃をも吸収する特殊素材。


「迂回路は!!?」


私の問いに、皇城翠は怯みながら首を振った。


「ある…かもしれないけど、別に俺…此の塔の地図知っている訳じゃないし」


どんどん、どんどん。


壁を叩き続ける芹霞さんの拳が、血で染まっていく。


「櫂、櫂、櫂!!!」


それはまるで、狂ったように。


そこまで櫂様を案じて、そこまで櫂様を求めて。

芹霞さんと櫂様の絆は、私達が考えている以上に強く。


ああ――


「……っ!!」


玲様の顔が哀しみに曇っていく。